家庭菜園で大豆を育ててみたいけれど、何から始めれば良いか分からない、と悩んでいませんか。多くの方が大豆栽培は難しいというイメージをお持ちかもしれませんが、実はポイントさえ押さえれば初心者でも十分に楽しめます。
この記事では、大豆の育て方に関するあらゆる疑問にお答えします。ベランダでできる大豆栽培プランターでの方法から、家庭菜園で大豆を育てる時期はいつが最適か、大豆の種まきで水につけるべきか、そして大豆を育てるときに気をつけることは何かまで、丁寧に解説します。
さらに、大豆の育て方を簡単イラストのように分かりやすく説明し、小学生3年生でも理解できるような平易な言葉でご紹介しますので、ご家族で挑戦するのもおすすめです。
また、気になる「大豆栽培は儲かりますか?」という素朴な疑問にも触れていきます。この記事を読めば、あなたもきっと大豆栽培を始めたくなるでしょう。
この記事の内容
- 大豆栽培が初心者にも簡単な理由
- プランター栽培の具体的な手順とコツ
- 栽培中に注意すべき病害虫とその対策
- 収穫量を増やすための管理方法
始める前の家庭菜園と大豆の基本知識
※画像はイメージ:家庭菜園の時間
大豆栽培は難しいと思っていませんか?
「大豆栽培」と聞くと、広大な畑と専門知識がなければ手を出せない、少し敷居の高い作物だと感じる方が多いかもしれません。
確かに、種まきから収穫まで約4ヶ月という栽培期間は、ラディッシュやリーフレタスのような短期で収穫できる野菜に比べると長く、忍耐が求められる場面もあります。
また、莢(さや)が膨らむ大切な時期にカメムシなどの害虫が発生しやすく、対策を怠ると収穫に大きな影響が出ることも、上級者向けというイメージを強めている一因でしょう。
しかし、これらの課題は家庭菜園の規模であれば、適切な知識で十分に対応が可能です。大豆はもともと日本の気候風土によく合った、非常に生命力の強い植物です。
難しいと感じる原因の多くは、良かれと思って行った過剰な世話、特に「肥料の与えすぎ」や「水のやりすぎ」、そして同じ場所で作り続けることで発生する「連作障害」といった、事前に知っていれば防げる事柄がほとんどです。
本記事で解説するポイントを一つひとつ実践することで、大豆栽培は「難しい挑戦」から「実り豊かな楽しい経験」へと変わるはずです。
大豆栽培が難しいと感じる主な理由
- 栽培期間が約4ヶ月と比較的長い:成果が見えるまでに時間が必要。
- カメムシなどの害虫被害に遭いやすい:特に実が付き始める時期の対策が重要。
- 肥料の与えすぎ(つるぼけ)で実がつかないことがある:良かれと思った世話が裏目に出やすい。
これらの点は、適切な時期に適切な管理を行うことで、十分に乗り越えることが可能です。
言ってしまえば、大豆は多少痩せた土地でも育つほどの力強さを持っています。その秘密は、マメ科植物特有の「根粒菌(こんりゅうきん)」との共生関係にあります。
根粒菌は、大豆の根にコブ状の棲み家(根粒)を作り、空気中の窒素を植物が利用できる形に変えて供給してくれます。
これは、植物にとって最も重要な栄養素の一つである窒素を、自ら作り出す天然の肥料工場を根に持っているようなものです。このため、他の多くの野菜ほど肥料を必要とせず、かえって管理がしやすいという大きなメリットがあるのです。
まずは基本的な育て方を学び、その生命力を信じて気軽に挑戦してみましょう。
大豆栽培は初心者でも安心して挑戦可能
前述の通り、大豆栽培は決して難しいものではなく、むしろ家庭菜園の初心者の方にこそおすすめしたい、学びの多い作物です。
なぜなら、一粒の種から芽吹き、花を咲かせ、実を結ぶまでの約4ヶ月間は、植物の成長サイクル、土づくりの重要性、そして病害虫との向き合い方まで、家庭菜園の基本を総合的に体験できる絶好の機会だからです。
初心者が安心して挑戦できる理由は、具体的に以下の3つが挙げられます。
理由1:肥料の管理が驚くほど簡単
大豆は根粒菌の働きにより、空気中の窒素を栄養として取り込めるため、窒素(N)成分を多く含む肥料はほとんど必要ありません。
市販の野菜用肥料を他の野菜と同じ感覚で与えすぎると、葉や茎ばかりが過剰に茂り、花や実が付きにくくなる「つるぼけ」という失敗の典型的な原因となります。
基本的に、元肥として緩効性肥料を少量土に混ぜ込む程度で、追肥も開花期にリン酸(P)やカリウム(K)が多めの肥料を少量与えるくらいで十分。肥料の種類や量で悩むことが少ないのは、初心者にとって大きな安心材料です。
理由2:栽培方法が確立され、情報が豊富
大豆は古くから日本全国で栽培されてきた歴史ある作物です。そのため、育て方のノウハウが豊富に蓄積されており、基本的な栽培方法は確立されています。
種まき、間引き、土寄せ、摘心といった各工程の目的が明確で、手順通りに進めれば大きな失敗はしにくいでしょう。さらに、品種改良も進んでおり、家庭菜園でも育てやすいように小型化された品種や、病気に強い品種も開発されています。
プランター栽培にも十分適応できるため、畑がない都市部の住民でも手軽に始められます。
理由3:成長過程と収穫の楽しみが2倍ある
小さな双葉が土を持ち上げて顔を出す姿、夏に咲く可憐な花、そして日に日に膨らんでいく莢(さや)の様子は、日々の観察の喜びと感動を与えてくれます。
最大の魅力は、収穫のタイミングをずらすことで「枝豆」と「大豆」の2つの味覚を楽しめる点です。莢が鮮やかな緑色で、中の豆がふっくらと膨らんだ時期に収穫すれば、採れたてならではの格別な風味を持つ枝豆が味わえます。
そのまま収穫せずに待てば、やがて株全体が枯れ、乾燥した大豆として収穫できます。
この「一粒で二度おいしい」体験は、栽培のモチベーションを最後まで高く保ってくれるでしょう。

省スペースで楽しむ大豆栽培プランター活用法
「大豆を育ててみたいけれど、使えるのはベランダだけ…」と諦めていませんか。大豆はプランターを使えば、限られたスペースでも十分に栽培を楽しむことができます。
もちろん、地植えに比べて一度に収穫できる量は少なくなりますが、準備や管理の手間が少なく、気軽に始められるのがプランター栽培の最大のメリットです。
プランター栽培のための準備リスト
プランター
大豆は根をある程度深く張るため、深さが25cm以上ある野菜用の深型プランターが理想です。幅60cm程度の標準的なプランターであれば、2〜3株を育てられます。
土
初心者の方は、最初から肥料分が調整されている市販の「野菜用培養土」を使うのが最も手軽で確実です。自分で土を配合する場合は、赤玉土6:腐葉土3:バーミキュライト1くらいの割合が良いでしょう。
鉢底石
プランターの底が見えなくなる程度に敷き詰めます。水はけを良くし、根腐れを防ぐ重要な役割があります。ネットに入ったものを使うと後片付けが楽です。
支柱とビニールタイ
草丈が50cm以上に成長するため、株を支えるための支柱(長さ70cm程度)は必須です。茎を傷つけないよう、柔らかいビニールタイや麻ひもを使いましょう。
種または苗
プランター栽培では、草丈があまり高くならない早生品種や矮性(わいせい)品種を選ぶと管理がしやすくなります。
プランターでの育て方・栽培管理のステップ
基本的な流れは地植えと共通しますが、プランター栽培では特に水管理と支柱立てが成功の鍵を握ります。
- プランターの底に鉢底石を敷き、その上に培養土を縁から2〜3cm下まで入れます。
- 幅60cmのプランターなら2ヶ所、指で深さ2cmほどの穴をあけ、1ヶ所に2〜3粒ずつ、互いに触れないように種をまきます。
- 土を優しくかぶせて軽く手で押さえた後、鉢底から水が流れ出るまで、ジョウロでたっぷりと水を与えます。
- 発芽して本葉が1〜2枚になったら、生育の良い株を1ヶ所につき1本だけ残し、残りはハサミで根元から切り取って間引きます。
- 草丈が20cm程度に伸びてきたら、株が倒れないように早めに支柱を立て、茎をビニールタイで8の字に緩く結んで固定します。
- 土の表面が白っぽく乾いたら、水やりのサインです。プランターの底から水が十分に流れ出るまで、たっぷりと与えるのが基本です。
プランター栽培での水やりの注意点
プランターは地植えに比べて土の量が限られているため、特に夏場は非常に乾燥しやすくなります。猛暑日には朝夕の2回水やりが必要になることも珍しくありません。
水切れは花の落下や実の不入りに直結するため、土の乾燥具合を毎日チェックする習慣をつけましょう。一方で、水のやりすぎは根腐れの原因になります。「土が乾いたら、たっぷりやる」というメリハリが大切です。
家庭菜園で大豆を育てる時期はいつがいい?
大豆の栽培を成功に導く上で、適切な時期に種まきを行うことは最も重要な要素の一つです。大豆は発芽に最低15℃以上の地温が必要とされ、生育適温は20℃〜25℃です。
そのため、春先の寒さが和らぎ、十分に暖かくなってから作業を始めるのが基本となります。焦って早く蒔きすぎると、発芽不良や初期生育の遅れにつながります。
栽培時期
日本は南北に長いため、栽培する地域によって最適な時期は異なります。お住まいの地域に合わせたスケジュールで栽培を計画しましょう。JA(農業協同組合)などが地域ごとに公開している「栽培暦」などを参考にすると、より正確な時期を知ることができます。
地域 | 種まき時期 | 主な作業 | 収穫時期(枝豆) | 収穫時期(大豆) |
冷涼地(北海道、東北など) | 5月下旬~6月中旬 | 7月〜8月(土寄せ、摘心、追肥) | 8月下旬~9月 | 10月中旬~下旬 |
中間地(関東、東海、近畿など) | 6月上旬~7月上旬 | 8月〜9月(土寄せ、摘心、追肥) | 9月上旬~中旬 | 10月下旬~11月 |
暖地(四国、九州など) | 6月中旬~7月中旬 | 9月〜10月(土寄せ、摘心、追肥) | 9月中旬~下旬 | 11月上旬~下旬 |
品種の「早晩性」を理解しよう
大豆の品種には、種まきから収穫までの期間が短い順に「早生(わせ)」、中間の「中生(なかて)」、長い「晩生(おくて)」という性質(早晩性)があります。
家庭菜園では、管理しやすく栽培期間も比較的短い早生〜中生の品種が人気です。購入した種の袋には必ず品種名と特性が記載されているので、確認してから栽培計画を立てましょう。
種まきが早すぎると低温による発芽不良や、生育初期に晩霜の被害に遭うリスクがあります。逆に、種まきが遅すぎると、株が十分に大きく成長する前に日長が短くなって開花してしまったり、気温が低下して実入りが悪くなったりする可能性があります。
お住まいの地域の平均的な気候と、選んだ品種の特性を考慮して、最適なタイミングで栽培をスタートさせることが豊作への第一歩です。
大豆の種まきは水につけるのが正解?
家庭菜園に慣れた方ほど、発芽率を上げるために種をまく前に一晩水につける「浸水処理」を行うことがあります。そのため、「大豆の種も同じように水につけるべきか?」という疑問がよく聞かれます。
結論から申し上げますと、大豆の種まきにおいて、事前の浸水処理は基本的に不要であり、むしろ避けるべきです。乾燥した状態のままの種を土にまくのが正しい方法です。
その最大の理由は、大豆の種子が非常にデリケートで、急激な吸水に弱い性質を持っているためです。乾燥した大豆を長時間水に浸すと、種が急激に膨張して表皮が破れたり、内部の組織が損傷したりすることがあります。
また、水中で酸素が不足し、種子が窒息して腐敗してしまう「湿害」のリスクが非常に高くなります。これは、発芽失敗の最も一般的な原因の一つです。
種まき直後の「水のやりすぎ」も厳禁!
種を水につけないのと同じ理由で、種まき直後に過剰な水やりをするのも避けるべきです。土が常にジメジメと湿った状態が続くと、土の中で種が腐ってしまう可能性が高まります。
- ① 種まきをしたら、一度だけたっぷりと水を与える。
- ② その後は、発芽するまで土の表面が乾いても水やりを我慢する。(土の中の水分で発芽します)
- ③ 双葉が完全に開いたら、通常の水やり(土が乾いたらたっぷり)を開始する。
この手順が、発芽を成功させる重要なコツです。
最も良い方法は、適度に湿り気のある土に、乾燥したままの種をまくことです。こうすることで、種は土の中で最適なペースでゆっくりと水分を吸収し、健全に発芽の準備を始めることができます。
もし、畑の土がカラカラに乾いている場合は、種まきをする前日までに一度畑全体に水をまき、土を「ほどよい湿り気(手で握ると固まり、指でつつくと崩れる程度)」にしておくと万全です。
家庭菜園での大豆の育て方!成功率アップ
※画像はイメージ:家庭菜園の時間
大豆の育て方を簡単イラストでチェック
ここでは、大豆栽培の種まきから収穫までの全工程を、イラスト付きの解説書を読むような感覚で、より詳細にステップバイステップで解説します。それぞれの作業の意味を理解しながら進めることで、成功率がぐっと高まります。
ステップ1:土づくり(植え付けの2週間前から)
美味しい大豆を育てるための最初のステップは、大豆が好むふかふかの土を作ることです。まず、植え付け予定の2週間前に、畑全体に苦土石灰を1平方メートルあたり約100g(コップ1杯程度)まき、クワやスコップで深く(20〜30cm)耕します。
これは、日本の土壌に多い酸性を中和し、大豆が育ちやすい弱アルカリ性に調整するためです。1週間前になったら、完熟堆肥を1平方メートルあたり2kg程度と、緩効性化成肥料(チッソ成分が少ないもの)を30gほどまき、再度よく土と混ぜ合わせます。
最後に、水はけを良くするために、幅60cm、高さ10cmほどの畝(うね)を立てておきます。
ステップ2:種まきと間引き(6月〜7月)
畝の準備ができたら、いよいよ種まきです。株と株の間隔(株間)を20〜30cmあけて、深さ2cmほどのまき穴を指や棒で作り、1つの穴に2〜3粒の種をまきます。
このとき、種のへそ(茶色い筋)を横に向けると発芽が揃いやすいと言われています。土を5mm〜1cmほど優しくかぶせ、軽く手で押さえて種と土を密着させます。
種まき後は、ハトなどの鳥に種を食べられてしまう被害を防ぐため、発芽するまでは不織布や防虫ネットをトンネル状にかけておくと万全です。
本葉が1〜2枚出てきたら、生育が良く、がっしりとした株を1ヶ所につき1〜2本残し、残りは根元からハサミで切り取って間引きします。
ステップ3:土寄せと摘心(7月〜8月)
大豆の安定した成長と収穫量アップのために欠かせないのが「土寄せ」と「摘心」です。土寄せは、株が風で倒れるのを防ぎ、茎の下部から新しい根(不定根)の発生を促す効果があります。
本葉が2〜3枚の頃と、5〜6枚の頃の計2回、株の周りの土を軽くほぐしながら、株元に土を寄せてあげます。
また、本葉が5〜7枚になったタイミングで、一番上の主茎の先端(成長点)をハサミで摘み取る「摘心(てきしん)」を行います。これにより、上への成長が一時的に止まり、エネルギーが脇芽の成長に向けられ、花を咲かせる枝の数が増え、結果的に収穫量アップに繋がります。
ステップ4:水やりと追肥(開花期が中心)
地植えの場合、根が育てば土中の水分を吸い上げるため、基本的に毎日の水やりは不要です。しかし、梅雨明け後、夏場に晴天が続いて土がカラカラに乾燥している場合は、朝の涼しい時間帯に水を与えましょう。
特に、紫や白色の小さな花が咲く「開花期」は、大豆が最も水分を必要とする時期です。
この時期の水切れは、花の落下や実の不入り(しいな)に直結するため、土の様子をよく観察してください。追肥は、花の咲き始めの頃に、株の周りにパラパラと化成肥料(リン酸・カリウムが多めのもの)を少量施すだけで十分です。肥料の与えすぎは禁物です。
ステップ5:収穫と乾燥(10月〜11月)
秋が深まり、葉が黄色く色づいて自然に落ちはじめ、莢全体が茶色く変色したら、いよいよ収穫です。収穫適期の目安は、莢を振ってみて「カラカラ」と乾いた音がするようになった頃です。
株ごと根から引き抜くか、地際をカマで刈り取って収穫します。収穫した株はすぐに脱穀せず、雨の当たらない風通しの良い軒下などに、根元を上にして逆さに吊るし、1〜2週間ほど追熟・乾燥させます。
完全に乾燥したら、ブルーシートなどの上で棒で叩いたり、足で踏んだりして莢から豆を取り出します。これが「脱穀」作業です。最後に、ゴミや虫食い豆を取り除けば、自家製大豆の完成です。
大豆の育て方は小学生3年生にもわかる
大豆の栽培は、理科の観察や自由研究のテーマとしても非常に人気があります。それは、一粒の小さな豆が、命を育み、たくさんの実をつけるまでのドラマが、子どもたちにとって分かりやすく、感動的だからです。
ここでは、小学生でも理解できるように、大豆栽培の重要なポイントを「大豆博士になるための3つのやくそく」として、楽しく解説します。
さあ、キミもこの3つのやくそくを守って、お父さんやお母さんと一緒に、おいしい大豆を育てる「大豆博士」を目指そう!
やくそく1:お日さまが大好きな「ひなた」にベッドを作ろう!
大豆は、太陽の光を浴びて元気に育つ、お日さまが大好きな植物です。お家の庭やベランダで、一番長く太陽の光が当たる、ポカポカと暖かくて風がよく通る場所を選んで、ふかふかの土のベッド(植える場所)を作ってあげましょう。
太陽の光をいっぱい浴びると、葉っぱで光合成という「栄養づくり」をたくさんすることができ、甘くておいしいお豆さんが育ちます。
やくそく2:お水とごはんは「あげすぎ注意」のサインを見逃すな!
人間もごはんを食べすぎるとお腹を壊すように、大豆もお水やごはん(肥料)をあげすぎると元気がなくなってしまいます。お水をあげるのは、土の表面が白っぽく乾いて、「のどが渇いたよ〜」というサインが見えたときだけ。
いつも土がジュクジュク濡れていると、根っこが息をできなくなってしまいます。
ごはん(肥料)も、お花が咲き始めた頃に「大きくなってね」と応援する気持ちで、少しだけあげるのがポイントです。あげすぎると、葉っぱばかりが茂る「わがままボディ」になって、肝心のお豆さんができにくくなるので気をつけよう。
やくそく3:大きくなるための「勇気のチョキン!」をしよう!
葉っぱの数が5枚から7枚くらいに増えてきたら、勇気を出して、一番上の茎の先っぽをハサミで少しだけ切ってあげます。これが「摘心(てきしん)」という、強くてたくさんの実をつけるための大切なおまじないです。
てっぺんを切ってあげることで、大豆は「よし、横に広がってもっと頑張るぞ!」と力を出し、脇から新しい芽(脇芽)がたくさん伸びてきます。
その脇芽に花がたくさん咲いて、収穫できるお豆の数がぐんと増える魔法のテクニックなのです。

大豆を育てるときに気をつけることは?
大豆栽培を無事に成功させるためには、起こりうるトラブルを事前に知り、適切に対策することが重要です。特に家庭菜園で注意すべき「連作障害」「病害虫」「水管理の失敗」という3つのポイントについて、具体的な対策を詳しく解説します。
1. 必ず避けたい「連作障害」
大豆はマメ科の植物です。同じ場所(同じ土)でマメ科の植物を毎年続けて栽培すると、土壌中の特定の養分だけが過剰に消費されたり、その植物を好む病原菌やセンチュウが土の中に増えたりして、極端に生育が悪くなる「連作障害」が非常に起こりやすいです。
一度大豆を栽培した畑では、次にマメ科の植物(インゲン、エンドウ、ラッカセイなど)を植えるまで、最低でも2〜3年は間隔をあけるようにしてください。
この間、アブラナ科やナス科など、科の異なる野菜を育てることで、土壌のバランスが回復します。なお、プランター栽培の場合は、毎年新しい培養土に入れ替えれば連作障害の心配はありません。
連作障害の主な症状
- 発芽しても、なかなか大きくならない(生育不良)
- 根にコブ(根粒)がほとんど付かない
- 葉が黄色くなったり、日中に萎れたりする
これらの症状が見られたら、連作障害を疑いましょう。
2. 収穫を左右する「病害虫」の対策
大豆は比較的丈夫な植物ですが、いくつかの病害虫には注意が必要です。特に、莢が付き始める時期からの害虫対策は、収穫物の品質に直結します。信頼できる情報源として、住友化学園芸の病害虫ナビなどで事前に写真を確認しておくと、早期発見に繋がります。
病害虫 | 主な被害と特徴 | 有効な対策 |
カメムシ類 | 最も注意すべき害虫。莢の上から口吻を刺し、中の豆の養分を吸う。吸われた豆は変色・変形し、食べられなくなる。 | 防虫ネットで株全体を覆うのが最も確実で効果的。開花前から設置する。少数であれば見つけ次第、捕殺する。 |
アブラムシ類 | 新芽や茎に群生し、汁を吸って株を弱らせる。ウイルス病(モザイク病)を媒介することがある。 | 発生初期に粘着テープなどで取り除く。牛乳スプレーも効果がある。大量発生時は適用のある薬剤を使用する。 |
ハスモンヨトウ | ヨトウムシの一種。昼間は株元の土に隠れ、夜間に幼虫が這い出して葉を暴食する。 | 株元の土を軽く掘って幼虫を探し、捕殺する。早期発見が重要。 |
モザイク病 | アブラムシが媒介するウイルス病。葉に濃淡のモザイク模様が現れ、株全体が萎縮して生育が止まる。 | 治療法はない。媒介者であるアブラムシの防除が最大の予防。発病した株は、他の株への伝染を防ぐため、速やかに抜き取って畑の外で処分する。 |
3. 最重要ポイント「開花期の水管理」
前述の通り、大豆の一生の中で最も水分を必要とするのが、花が咲いてから莢が大きくなるまでの約1ヶ月間です。この時期は、植物が子孫(豆)を作るために、最もエネルギーと水分を消費します。
この重要な時期に水切れを起こすと、せっかく咲いた花がポロポロと落ちてしまったり(落花)、莢がついても中の豆が大きくならなかったり(しいな)する原因となります。
地植えであっても、夏場に1週間以上雨が降らず、土が乾燥しているようであれば、朝夕の涼しい時間帯に、株元に水がしっかり染み込むようにたっぷりと水やりを行いましょう。
ちなみに大豆栽培は儲かりますか?
家庭菜園を始める動機として、「食費の節約」や「少しでも家計の足しになれば」といった経済的な側面を期待する方も少なくありません。では、手間と時間をかけて大豆を栽培することは、果たして金銭的に「儲かる」のでしょうか。
率直に申し上げると、家庭菜園の規模で大豆を栽培し、金銭的な利益(儲け)を生み出すことは、ほぼ不可能です。
スーパーマーケットで国産の乾燥大豆が500gあたり数百円で販売されていることを考えると、その金額を上回る価値を収穫するためには、かなりの面積と収量が必要になります。
栽培にかかる土や肥料、支柱、ネットなどの資材費、そして約4ヶ月にわたる水やりや草取りといった労力と時間を考慮すると、経済的な合理性は低いと言わざるを得ません。
仮にプランターで大豆を栽培した場合の簡単な試算をしてみましょう。
ちょっと真面目なコスト計算(例)
- プランター、土、支柱、種などの初期投資:約3,000円
- 1株からの平均的な収穫量(乾燥大豆):約30g〜50g
- プランター2株での総収穫量:約100g
- 市販の国産大豆100gの価格:約150円
この計算からも分かる通り、かけたコストを回収するのは非常に難しいのが現実です。
しかし、家庭菜園における作物の価値は、金銭的なものさしだけで測ることはできません。

- 最高の贅沢、収穫の喜び:自分の手で種をまき、育て上げた作物を収穫する瞬間の達成感と喜びは、何物にも代えがたいものです。
- 鮮度抜群の採れたての味:特に枝豆として収穫した場合、収穫後数時間で甘みが落ちてしまうため、採れたてをすぐに茹でて食べるという最高の贅沢は、栽培した人の特権です。
- 生きた学び、食育への貢献:子どもと一緒に育てることで、一粒の豆から食べ物ができるまでの過程を肌で感じ、自然の営みや食べ物の大切さを学ぶ貴重な機会になります。
- 広がる楽しみ、自家製への挑戦:収穫した大豆を使って、手間ひまかけた自家製の味噌や豆腐、きな粉を作るなど、食の楽しみが無限に広がります。
日本の食料自給率はカロリーベースで38%(令和4年度)と低く、その中でも大豆の自給率はわずか7%です。(出典:農林水産省「知ってる?日本の食料事情」)
このように、大豆栽培は金銭的な利益を追求するものではなく、私たちの食を支える農業への理解を深め、日々の生活を豊かにするための素晴らしい体験への投資と考えるのが最もふさわしいでしょう。
楽しい家庭菜園で大豆を収穫しよう
※画像はイメージ:家庭菜園の時間
この記事では、家庭菜園での大豆栽培について、初心者の方が抱えるであろう様々な疑問や不安に寄り添う形で、その魅力と具体的な育て方を詳しく解説してきました。
難しいという先入観を乗り越え、適切な手順で愛情をかけて育てれば、大豆はきっと豊かな実りで応えてくれます。
自分で育てた作物を収穫し、食卓で味わう経験は、私たちの日常にささやかな、しかし確かな彩りを与えてくれます。特に大豆は、枝豆という夏の味覚から、味噌や豆腐といった日本の食文化の根幹に至るまで、その恩恵の大きさを改めて実感させてくれる作物です。
ぜひ、このガイドをあなたの大豆栽培の第一歩として活用し、楽しい家庭菜園で、美味しい大豆の収穫という素晴らしいゴールを目指してください。
最後に、成功へのポイントをリスト形式で再確認しましょう。
ポイント
- 大豆栽培は初心者でも挑戦しやすい作物
- 難しいというイメージは事前の知識で克服できる
- プランターでも深さのあるものを選べば栽培可能
- 栽培時期は地域によって異なり6月〜7月が一般的
- 種まきの際に水につける必要はない
- 肥料の与えすぎは「つるぼけ」の原因になるため控える
- 日当たりと風通しの良い場所を好む
- 本葉が5〜7枚の頃の「摘心」が収穫量アップの鍵
- 株が倒れないように「土寄せ」を2回行う
- 花が咲く時期の水切れは絶対に避ける
- 主な害虫はカメムシで防虫ネットが有効な対策
- 同じ場所での連続栽培(連作)は避ける
- 収穫は莢が茶色くなりカラカラと音がしてから
- 未熟な状態で収穫すれば枝豆として楽しめる
- 金銭的な利益よりも体験価値を重視して楽しむ